名古屋市千種区東山通の内科・消化器内科・糖尿病・健康診断 ながい消化器内科クリニック

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ながい消化器内科クリニック便り

新型コロナウイルス感染に対する今すべき対策 74号 R2.5

ゴールデンウィークを境に、新型コロナウイルスの新たな陽性者数の減少傾向がみられ、終息のメドが立ってきました。しかし中国黒竜江省・吉林省あるいは韓国では新たな集団感染がみられますから油断できません。

現在までの知見で不気味なことは、全く感染経路を特定できない感染者が発生していることです。全く症状のない、いわゆる不顕性感染者が他人に新型コロナウイルスを感染させるか否かという問題です。この可能性があるならば、その対策として三密を避けることは当分の間、続けなければなりません。また不特定多数の人と接触する可能性のある場所ではマスクを装着し、何に触れたか判らない手指で、鼻や口を触らないことです。

発熱のため心配して保健センターに相談しても、PCR検査を行ってもらえません。先ずかかりつけ医に相談しなさいと言われます。また直接病院へ行ってもすぐに外来でPCR検査をしてもらえません。因みに近隣の病院からは、「新型コロナ肺炎を疑う患者様は、先ず保健センターに連絡するように」との通達が入っています。「PCR検査が受けられないと新型コロナ肺炎の治療をしてもらえない」という理由で、医療機関を受診せず経過観察していてはいけません。自宅待機中に突然呼吸困難となり死亡した例や、高熱・血痰・呼吸困難など突然重症肺炎に移行した例が報道されています。

発熱を伴う感冒様症状で発症する疾患は、新型コロナ肺炎以外に普通のかぜ、インフルエンザ、従来の肺炎などがありますから、先ず早めに医師の診察を受けて鑑別診断してもらうことです。胸部X線写真で肺炎を疑わせる所見がなくても症状が疑わしければ、新型コロナ感染肺炎への進行を阻止する治療が必要となります。当院では2003年のSARSの時に効果的だった2種類の漢方薬「補中益気湯」「荊芥連翹湯」、および細菌とウイルスとの中間的な病原体であるリケッチャにも効果がある抗生剤「ミノマシン」を処方しています。

いずれにしても重要なことは、感染しても不顕性のままで終わること、発症しても感冒程度の症状で済み肺炎を発症しないこと、肺炎を発症しても重症化しないこと、重症化しても死亡しないことです。それには免疫力・抵抗力を充実させ、コロナウイルスに負けない体力を維持することです。油断してかぜを引いたり、お腹をこわしたり、過労になったり、深酒したりして、免疫力を落とさないことが肝腎です。

今や世界的大手製薬会社などがワクチン製造に邁進していますから、来年以降の再流行には間に合うかもしれません。また新しい抗インフルエンザウイルス薬や抗HIV薬治療薬、あるいは慢性膵炎の薬などが、治療薬として有効か否かの治験が行われています。多少時間がかかると思いますが、インフルエンザウイルスに対するタミフルのような特効薬が開発されれば、死亡率を劇的に下げることが期待されます。

原因がわかりにくい頑固な腹痛~好酸球性胃腸炎 73号 H31.4

通常の診療行為によって比較的容易に確定診断できる腹痛の原因疾患と、診断に苦慮し治療法にも悩む腹痛疾患があります。前者には胃十二指腸潰瘍・急性胃炎・胆石胆嚢炎・慢性膵炎・急性虫垂炎などがあります。一方後者には機能性胃腸症・過敏性腸症候群など原因が明らかではない疾患があり、その代表的疾患が好酸球性胃腸炎です。食道から大腸まで消化管のあらゆる部位で炎症が起きます。

ある特定の食物中の物質によってサイトカインと呼ばれる生体内活性物質が生成され、骨髄において白血球の一種である好酸球が産生・活性化され、消化管の局所で炎症反応が発生すると考えられています。

厚生労働省の診断指針の主な項目は
1 腹痛・下痢・嘔吐などの症状がある
2 消化管粘膜の炎症部位に好酸球浸潤がみられる
3 アレルギー体質がある
4 末梢血中に好酸球増多がみられる
5 CT検査にて胃腸管壁の肥厚を認める
6 内視鏡検査にて胃・小腸・大腸に浮腫・発赤・ビランを認める
7 ステロイドが有効である

原因不明で難治性の腹痛を訴える場合、アレルギー機序を念頭に置き検査を進めます。腹部のいろいろな部位に圧痛があり、また痛みの部位が移動する場合は、好酸球性胃腸炎の可能性があると考えます。問診にて食べた後に腹痛・下痢・吐き気・口の周りのしびれ感などの症状が現れるような場合、その食物に対して過敏症があると想定して、アレルゲン検査を行います。また末梢血液中の好酸球が増加しているか否かを調べます。腹部単純X線撮影にて小腸ガス像が現れている場合、本疾患の可能性が高いと考えます。腹部CTも診断確定に有用です。十二指腸・空腸・回腸など主に小腸の所々に、壁の肥厚・内容物の停滞・ガス像を認める場合も診断根拠になります。

治療は先ず抗アレルギー薬を1~2週間服用し、治療効果を判定します。短期間で軽快する場合と数か月間、治療を継続する場合があります。
強い腹痛を訴える場合はステロイドの点滴を行います。

「膵臓がん」について 72号 H28.12

そもそも膵臓とは?
膵臓は体の中心部、胃の後ろ側に隠れるように位置し、長さは大人で約20cm、洋ナシを横にしたような細長い形をしています。体の中心部に近い膵臓の右側のふくらんだ部分を膵頭部といい、大半を十二指腸が取り巻くように接しています。反対の左側は幅が狭くなっており、端の部分は膵尾部といって脾臓(ひぞう)という臓器に接しています。

「膵臓がん」について 72号 H28.12
 
「膵臓がん」について 72号 H28.12
 
膵臓の働きは?
膵臓は大きく2つの役割を果たしています。一つは食物の消化を助ける膵液の産生(外分泌)です。膵液は膵管(すいかん)によって運ばれ、主膵管(しゅすいかん)という1本の管に集まり、肝臓から膵頭部(すいとうぶ)の中に入ってくる総胆管と合流し、十二指腸乳頭(じゅうにしちょうにゅうとう)へと流れます。もう一つはインスリンやグルカゴンなど血糖値の調節に必要なホルモン産生(内分泌)です。このホルモンの産生に関係するのがランゲルハンス島と呼ばれる細胞群で、膵体尾部に多くあります。
年齢別にみた膵臓がんの罹患率(病気にかかる割合)は60歳頃から増加し、高齢になるほど高くなります。
60歳以上の急な糖尿病や、黄疸にも膵臓がんの疑いがあります。

膵臓がんを見つける(スクリーニング)には?
臨床の現場で、膵臓の病気の早期発見に有用な「血清トリプシン(trypsin)値」検査。

膵臓の検査では、アミラーゼやリパーゼの測定値を見ることも多いのですが、トリプシンは膵臓以外の臓器には存在しない酵素であるため、特異性がより高くなります。
簡便な血液検査のため患者様の身体的・経済的負担も軽くて済みます。一般的な膵臓の疾患の診断と共に膵臓がんの早期発見につながるスクリーニング検査として、患者様の側もぜひ「血清トリプシン(trypsin)値」を心に留めていただければと思います。

膵臓がんを予防するには?
確実な危険因子である「喫煙」に特に注意を!
喫煙は膵臓がんの確実な危険因子であることが分かっています。膵臓がんに限りませんが、緑黄色野菜を積極的に食べることもがん予防に役立ちます。

ステロイド長期投与に伴う問題点 71号 H27.9

関節リウマチなど膠原病治療のためにステロイドホルモンを長期間服用すると、種々の問題が浮上します。 先ず感染症に対する抵抗力が弱くなります。そもそもウイルス、細菌、カビなどの異物が体内に侵入すると、生体内では、免疫機構が働き病原体を排除するようになっていますが、ステロイドホルモンは、その免疫機構を抑えるように作用しますから、病原体の増殖を助長してしまいます。例えば水虫に対して誤ってステロイド軟膏を塗布しますと水虫が拡大してしまいます。次に骨粗鬆症を助長します。特に高齢者ではステロイドを投与する場合、破骨細胞の活性を抑えるビフォスフォネート製剤を予防的に投与する必要があります。男性の骨粗鬆症の原因の第一位はステロイドの長期投与です。三番目に副腎皮質機能不全が挙げられます。外からステロイドホルモンを投与すると脳下垂体はステロイドが十分あるならば、副腎皮質を刺激する必要がないと感知し、副腎皮質刺激ホルモンの分泌を抑えてしまいます。その結果副腎皮質の機能は低下し、さらに組織が萎縮してしまいます。ステロイドホルモンは元来生体に大きなストレスが加わった時に一気に放出され、生命維持に働きますから、そのような時にホルモンが不足し、倦怠感や脱力など虚脱状態に陥ってしまいます。その他には消化性潰瘍・糖尿病・精神状態の変調などが挙げられます。このような事態が起こりうることを患者様に十分説明し、早めに対策を講じることが大切です。

好酸球性胃腸炎 70号 H27.7

突然の激しい腹痛あるいは頑固な腹痛を訴えるが、診断の決め手となる所見に乏しく治療に難渋する疾患に遭遇することがあります。そのような疾患の中に聞き慣れない疾患名の好酸球性胃腸炎があります。最近立て続けに3例経験したので、今回はそのテーマで紹介します。
白血球の中には、通常の細菌感染で増加する好中球、ウイルス感染で(主に相対的に)増加するリンパ球の他に、好酸球・好塩基球・単球などがあります。好酸球は主にアレルギー性疾患や寄生虫疾患でその数が増加します。例えば花粉症では鼻汁中には好酸球が増加します。また気管支喘息では気管支粘膜に好酸球が増加します。消化管も例外ではなく、食物に対するアレルギー反応が消化管で発生すれば、消化管粘膜中に好酸球が増加します。好酸球が消化管に浸潤し障害を起こし、機能を障害する疾患を総称して好酸球性消化管障害と呼び、特に胃・小腸・大腸に病変が存在し機能障害を起こす場合を好酸球性胃腸炎と呼びます。
食物抗原によってサイトカイン(生体内活性物質)が生成されると、骨髄において好酸球が産生され、これが粘膜局所へ浸潤すると炎症が起きます。炎症の場によって症状の違いがありますが、胃や十二指腸に炎症が起きますと、上腹部痛・吐き気・嘔吐・食欲不振などの症状が出現します。これらの症状は、この疾患特有症状ではなく、急性胃炎・急性膵炎・慢性膵炎急性増悪・急性胆のう炎・胆石発作・上腹部イレウスなどでも見られます。
先ず圧痛部位を確認し、必要な検査を進めます。腹部単純X線検査では例えば十二指腸から小腸にガスが出現します。腹部超音波検査では胆のうや膵の異常を確認します。腹部CT検査では、例えば消化管の壁の肥厚浮腫の有無を確認できます。消化管内視鏡検査では粘膜の腫脹浮腫発赤などを確認し、その病変部位の生検を行います。粘膜組織中の好酸球の数が一定以上であれば確定診断できます。
治療は先ずステロイドの点滴静注を行い、その後はプレドニンの内服を始め症状を見て漸減します。

意外に多い慢性膵炎 69号 H27.6

膵臓はお腹の中の奥深いところにありますから、胃や肝臓のように簡単にアプローチできません。そのため消化器内科医でさえも、上腹部痛の患者様に対して胃を調べても膵臓の存在を忘れて、胃薬のみで経過を見ていることが多々あると思います。胃薬を飲んでも上腹部痛が続く場合、再度圧痛部位を調べます。臍の数センチ上で正中からやや左にかけて圧痛があれば、膵臓を調べることにしています。形態的変化を知るために、腹部超音波検査あるいは腹部CT検査を行います。膵石を発生しているような高度の慢性膵炎ではこれら画像検査で診断できることがありますが、そのようなケースは稀で、多くの慢性膵炎では形態学的な異常はほとんど見られません。私は大学の医局に在籍中は、慢性膵炎が疑われる患者様に対して、十二指腸の奥までゴムゾンデを挿入し膵外分泌機能検査を行っていましたが、一人の患者様には3時間近くゾンデを入れたまま我慢してもらっていました。このような検査を一般病院や診療所で行うことは不可能です。最近行っている検査は血清トリプシン値を測定することです。トリプシンは血中半減期が長く、数週間前に膵炎発作が起きたとしても、それを感知するのに適しています。言わば指名手配犯を逮捕するようなものです。一方血清アミラーゼやリパーゼは血中半減期が短いため、発作の翌日には正常化しています。従ってこれらの酵素の測定は言わば現行犯逮捕のようなものです。もしトリプシン値が高値であれば慢性膵炎として、フォイパンなど膵酵素阻害剤を始めます。女性の慢性膵炎の原因は特発性が多いといわれていますが、実際には鶏のから揚げのような高脂肪食を摂取してから発作が起きるようです。脂肪制限によって発作を予防することも大切です。

エボラ出血熱 68号 H26.9

西アフリカでエボラ出血熱が流行し、2000人以上の人々が亡くなり、さらに拡大の様相を呈しています。現時点では特効薬がなく、医師団も衰弱した患者様に補液を行う程度の対症療法を行っているだけです。数日前には入院中の患者が逃げ出すなどの騒ぎもあったようです。自分も感染し命を失う可能性があるにも拘わらず、使命感に燃えて現地で懸命の努力を続けている「国境なき医師団」の人たちには頭が下がる思いです。
現地から1万キロ近く離れた日本の地に住む医療人として何か役に立つことはないかと考える日々が続いています。ハタと思いついたのが2003年のSARS騒動です。それまで人類が曝されたことがなかったコロナウイルス感染が中国南部から始まり香港・台湾・中国全土・ベトナムなどに拡大し、多くの死者が出たことは記憶に新しいことです。当時私が師事していた中国人の漢方の先生からの情報では、「広東省のある病院では、SARS患者にある漢方薬を2種類処方したところ、一人の死者も出なかった」ということでした。
感染症成立のメカニズムに立ちかえってみると、病原体側の病原性の強さと宿主側の免疫力の強さが重要であるということです。エボラウイルス対策として、ワクチンと抗ウイルス薬の開発に力が注がれていますが、宿主側の免疫力を高めることは今日からでも開始できますから重要なポイントです。
このような観点から私が提案したいことがあります。それはSARSの際に有効だった漢方薬(補中益気湯および荊芥連翹湯)を、西アフリカのエボラの患者および患者に接触する可能性の高い人たちに服用させることです。すぐに実行可能です。このことを「国境なき医師団日本支部」に提案したところです。
デング熱同様に、やがて日本にもエボラウイルスが上陸するかもしれません。免疫力を落とさないように日々の生活に注意しましょう。

デング熱 67号 H26.8

ごく最近、海外渡航歴のない東京の大学生3人がデング熱を発症しました。本来東南アジア、アフリカ、中南米に生息するネッタイシマ蚊によって媒介され、ヒトからヒトへは直接感染しないとされてきました。しかし今回の日本国内の発生がみられたことから、このような熱帯地方に流行するウイルス感染症が、日本でも流行する可能性があることを示唆しており、我々も予防策を講じる必要性が出てきました。熱帯地方に滞在した人が無症状のまま帰国し、その人を刺した日本に元々生息するヒトスジシマ蚊が、他の人に感染させたのかもしれません。あるいはネッタイシマ蚊が飛行機や船などの荷物に紛れ込み日本にやってきたのかもしれません。また地球温暖化に伴ってネッタイシマ蚊の生息範囲が北上し、日本も東南アジア並の亜熱帯地域に組み込まれたのかもしれません。
デングウイルスの潜伏期間は数日で、発熱、発疹、頭痛・筋肉痛・関節痛など各部の痛みを主な症状とします。一方重症型のデング出血熱やデングショック症候群では、ショック状態、胸水腹水の貯留、点状斑状出血、血小板減少などを生じ、最重症例では血圧の低下から死に至ることもあります。
現時点では特異的治療法がありませんので、対症療法を行うのみです。
予防には、蚊に刺されないこと、蚊を駆除することが挙げられます。デングウイルスに感染しても発症しない不顕性感染もあるといわれています。ウイルス感染の際に重要なことは、免疫力・抵抗力を良好なレベルに維持することです。風邪を引かない、過労にならない、栄養不足にならないようにバランスの良い食事をする、深酒しない、睡眠不足にならない、適度な運動を実行するなどです。

薬と副作用 66号 H26.7

今回は薬の副作用についてお話します。最近予想もしなかった薬の副作用と思われる症例を経験しました。それは心房細動の患者様において脳塞栓を予防するための新薬です。プラザキサ(一般名ダビガトラン)という名の抗血栓薬でした。約2年前まで当院では従来のワーファリンという薬を処方していましたが、循環器内科の医師が新薬プラザキサを使うことになりました。毎月血液検査を行う必要がない、食物による干渉作用が少ないなどの利点があり、本薬を使うことになったようですが、ある時突然の嚥下時の前胸部痛があるとのことで、当院で経鼻上部消化管内視鏡検査を行いました。食道中部に2か所の大きな浅い潰瘍を認めました。これがプラザキサによる食道潰瘍でした。少量の水と同時に服用すると、カプセルが食道に留まることがあり、内容物が溶け出し潰瘍を形成するとのことです。症状は逆流性食道炎に準じた薬剤で軽快しましたが、処方した循環器科医が服用方法をキッチリ説明すべきであったと思います。便利さを追求するあまり、薬剤による重大な副作用が生じてしまった典型例だと思います。
当院ではその他、一見矛盾しているようですが抗アレルギー薬による薬剤アレルギーによる肝障害、肝臓によいと言われているウコンによる肝障害、咳止めや漢方薬による高齢男性における尿閉、経口糖尿病薬による下腿浮腫などを経験しました。初めて服用することになった薬剤や、しばらくの休薬期間を挟んで再投与される薬で思わぬ副作用が出現することがあります。また特異体質のため極めてまれな副作用が出ることもあります。もし服用して気分不快や胃部不快感、しびれ感などなんらかの違和感を覚えたら、服薬を直ちに中止し、早めに担当医師にその件を伝えてください。

東西融合医療が有効な疾患(2)がんと漢方薬 65号 H26.6

がんの発生・増殖にはがん遺伝子が深く関与しています。がん遺伝子は発がん遺伝子とがん抑制遺伝子に分けられます。発がん物質に曝されると細胞内の遺伝子に突然変異が生じ、細胞ががん化します。一方がん抑制遺伝子が突然変異を起こすとがんの発育を抑えることができません。人間が持っているがん抑制遺伝子の中の代表選手がp53です。発生したがん組織が全て成長増殖するわけではありません。がんが成長するためにはp53などがん抑制遺伝子やリンパ球からの攻撃に打ち勝たねばなりません。
漢方方剤の一つである十全大補湯は、Natural Killer cell(殺し屋リンパ球 NK細胞)を活性化します。活性化されたNK細胞はサイトカインという生体内活性物質を血中へ放出します。サイトカインはがん細胞を攻撃します。また十全大補湯にはがん治療の際に行われる放射線の治療効果を高めたり、抗がん剤による不都合な副作用を軽減したりする作用もあります。
そこで当院では以前からがんと診断された全ての患者様に十全大補湯を服用していただいています。西洋医学的根治術と並行して本剤治療を続けることによって、がん自体あるいは抗がん剤による生体に対する悪影響を緩和することが期待できます。
「がん治療には盾(免疫力・抵抗力)と矛(外科手術・抗がん剤・放射線)を組み合わせることが重要です」

東西融合医療が極めて有効な疾患 64号 H26.4

当院では西洋医学的治療法のみでは難治性の疾患に対して、同時並行的に漢方薬を用いることによって劇的に治療効果が上がった疾患・症例を経験してきました。その一部を紹介します。
帯状疱疹:胸部を中心にいろいろな部位に発赤とその中心に水疱を形成し、極めて痛みの強い疾患です。原因は末梢神経系に親和性がある水痘帯状疱疹ウイルスが、免疫力が低下した時などに活性化します。通常は抗ウイルス薬を約1週間服用しますが、激しい痛みに対して消炎鎮痛剤が処方されます。しかし神経痛が半年から1年続き、治療に難渋する場合が多々あります。当院では当初から漢方薬を併用し良好な経過が得られた症例を何例も経験しています。鎮痛剤は消化器症状を発症することが多く、これを定期的に服薬することは避けるのが無難です。
癒着性イレウス:開腹手術を受けると、生体では腹膜の治癒過程で臓側腹膜と腹壁腹膜との間に癒着が生じ、丁度レースのカーテンの様です。腸管がカーテンの隙間に入り込んで元へ戻れなくなると、便秘・腹満、さらに腹痛・嘔吐などの症状が始まります。軽症の場合は保存的治療で回復しますが、重度の場合は入院の上絶食・補液・イレウス管挿入などの処置を行います。軽症例では食事制限・漢方薬・水分摂取・時に抗生物質投与が奏功します。
ホンの2疾患のみ紹介しましたが、これからも適用疾患を増やし治療成績を上げたいと考えています。

がんの予防(水際作戦) 63号 H26.3

前回は積極的に消化器がんが発生しにくい状態を作り出す方法を説明しましたが、今回は各臓器のがんの早期発見について説明します。がんの家族歴がある人は、ない人に比べがんの発生頻度が高いので、少なくとも年1回は全体的ながん検診を受けるべきです。
肺がん:特に喫煙習慣のある人・夫の煙草の煙を吸う妻は、それ以外の人に比べ数倍のリスクがありますから、咳や痰があろうとなかろうと、年2回は検診を受けたいものです。費用面から考えても先ず胸部単純X線検査を受け、もし疑問点があれば直ちに胸部CT検査を受けましょう。
食道がん:喫煙・飲酒がリスクを上げますから、そのような人は年2回は内視鏡検査を受けましょう。逆流性食道炎(胸やけ・呑酸・夜間咳嗽)のある人は食道腺がんが発生しやすいので、少なくとも年1回は内視鏡検査を受けましょう。
胃がん:特に喫煙習慣のある人・漬物や干物など塩分の多い食品を好む人はリスクが高いので、年1回は内視鏡検査を受けましょう。
肝がん:B型あるいはC型肝炎ウイルス・飲酒・脂肪肝などがリスクを上げます。B型慢性肝炎、C型肝硬変症の人は特にリスクが高いので年数回は腹部超音波検査を受け、早期発見に努めましょう。
膵胆道系がん:肝機能検査や超音波検査などで偶然発見される場合が多く、黄疸・頑固な腹痛・やせが始まってからではすでに進行していることが多いので、定期的に腹部超音波検査と肝機能検査を行うことが重要です。
大腸がん:肥満と肉食を好む人にリスクが高いので、その様な人はまず便ヒトヘモ2回法を少なくとも年1回は受けましょう。1回でも陽性であれば大腸内視鏡検査を受けましょう。
腎がん・膀胱がん・前立腺がん:早期発見には尿検査・腹部超音波検査・PSAが必須です。
乳がん:授乳経験のない人、家族歴がある人はマンモグラフィーなど乳がん検診を積極的に受けましょう。
子宮がん:20歳以上の女性は細胞診を年1回は受けましょう。
いずれにしても年1回あるいは2年に1回はこれらの検査を受け、早期発見の幸運をつかむか、あるいは健康であることを確認して自信を持つかです。

消化管がんの予防 62号 H26.3

近頃、有名芸能人が食道がんのために他界したというニュースが気になります。がんに罹患したのは自己責任なのでしょうか。一般的に、がん発生に関与している要因は①老化②遺伝子③環境といわれています。①②については、本人の責任ではないと思いますが、③については、我々一人一人が日常生活を送る上で注意を怠らなければ、原因因子を抑えることができるかもしれません。

最近の疫学調査で判明したことを紹介します。
1 身体活動は確実に結腸がんのリスクを下げる
2 野菜・果物は食道がん・胃がん・結腸がん・直腸がんのリスクを下げる可能性が大きい
3 喫煙は確実に食道がん・胃がんのリスクを上げる
4 過体重と肥満は確実に食道腺がん・結腸がん・直腸がんのリスクを上げる
5 飲酒は確実に食道がんのリスクを上げる
6 加工肉は結腸がん・直腸がんのリスクを上げる可能性が大きい
7 塩蔵品(塩漬け食品)・食塩は胃がんのリスクを上げる可能性が大きい
8 熱い飲食物は食道がんのリスクを上げる可能性が大きい

これらをまとめると
「運動不足にならないこと」「禁煙する」「過度の飲酒を慎む」「野菜果物を摂取すること」です。

今年のインフルエンザ事情 61号 H26.2

今年度は例年より早くインフルエンザの流行が始まりました。感染が確認されているタイプはA香港型(従来のA型)、新型(2009年に流行した豚型)およびB型です。迅速検査キットで判明するのはA型かB型かの区別だけです。新型はA型に含まれます。症状は、①高熱②悪寒③倦怠感④関節筋肉痛です。微熱程度の人もいますので、②③④が重要です。ただしこれらの症状は普通感冒でも現れますので、医療機関で検査を受ける必要があります。当院では抗ウイルス薬としてリレンザ、体調回復を促進する麻黄湯を用いてます。タミフルは耐性や副作用の面から用いていません。予防はワクチン以外に、自己の体調管理です。体の冷え、過労、睡眠不足、深酒などを避けることです。
ところで心配なのは中国浙江省などで発生している鳥インフルエンザH7N9です。中国では生きている鶏を市場などで購入し、自宅で調理する習慣があり、感染している鶏の呼気を吸入したり、生肉を直接手で触れたりすることによって、感染するといわれています。人から人への直接伝播は確認されていませんが、たとえば豚に感染すると豚の体内で人にも伝播するタイプに変異し、爆発的に人に流行する可能性があります。新しい型のインフルエンザウイルスに対するワクチンを製造するのに半年かかりますので、一般的な予防しか方法がありません。免疫力を高めることが重要です。その可能性があるのが漢方治療です。因みに11年前中国南部を中心に流行したSARSの治療に漢方薬が有効だったとの情報があります。

今年のノロウイルス 60号 H26.1

久々にノロウイルスが猛威をふるっています。1月中旬には学校給食のパンが原因と推定されているノロウイルス食中毒が、浜松市内の小学校児童と教員に広がり、学校閉鎖や学級閉鎖を余儀なくされています。大学受験生に感染すれば影響が大きく、予防が極めて大切です。ノロウイルスは次のような順で感染が拡大します。
汚染したカキなど二枚貝を生食>>>一次患者>>>下痢便や吐物>>>食器や食物に付着>>>二次患者>>>三次患者>>>四次患者>>>生活汚水>>>二枚貝
予防には、生カキを食べない。下痢患者は汚物・嘔吐物に触れない。食事摂取前や排便後の手洗いの励行。ウイルスが付着している可能性のあるものを塩素系漂白剤で消毒する。下痢患者は他人の食器や食物に手を触れない(下痢患者は食物を扱う仕事に従事しない)。
一般的には、体調管理を疎かにしない、睡眠不足、飲みすぎ、過労に注意する。誰かが手を触れたか不明のものを摂取しない。下痢・腹痛・吐き気・嘔吐などの症状が始まったら、できるだけ早く消化器内科医に相談し、適切な治療をうけること。

当院の治療方針
①漢方薬治療を基本に抗菌薬を服用する
②下痢止めは決して服用しない下痢便はウイルスを多量に含むので排泄した方がよい
③絶食して胃腸を安静にする
④脱水症や電解質喪失に対して、水分・ミネラル・糖分が必須であり、スポーツドリンクを温めて飲用する
⑤症状の改善がみられたら、粥を摂取する
⑥日本茶・梅干しは腸粘膜の修復に効果あり

病院か診療所か(3) 59号 H25.9

前号に引き続いて「病院か診療所か」を述べます。
今回は診療所の機能を考えてみましょう。

(1)プライマリーケアを行う
何らかの症状を発症したら、まず診療所を訪れて初期治療を開始する。診療所の医師はあらゆる症候から病名の予想を立て、自己の判断でできる治療を開始する一方、診療所での医療の限界を超える病態を有する患者様に対して適切な病院を紹介する。
(2)かかりつけ医の機能を有する
多数の疾患をもつ患者様の全体像を把握することによって、検査や薬剤の交通整理を行う。中には多数の病院、診療科に通院し薬がダブっていたり、過剰な診療が行われたりする場合に、患者様側の立場に立って適切なアドバイスを行う。
(3)病院機能を必要としない患者様の医療を担う
各診療科の専門医にとって重要な仕事は、病院機能を十二分に発揮できるような、あるいは診療所では扱えないような複雑で重篤な病態を有する患者様の診療を行うことであり、「お変わりありませんか?いつもの薬を出しておきます」だけで済むような患者様を見ることは、本来の仕事ではない。一方診療所の医師は定期的に通院している患者様の変化や訴えから、問題点を探り解決することを仕事の中心としている。

診療所は、急性疾患の初期診療、病状が安定している慢性疾患の経過観察、診療所の守備範囲内の治療を行い必要な時に病院専門医に紹介する、複数科にかかっている患者様の全体像を把握し無駄な医療を省くことなどです。まさに診療所開業医は「かかりつけ医」であり、「総合診療医」である。

病院か診療所か(2) 58号 H25.8

前号に引き続いて「病院か診療所か」を述べます。
今回は病院の機能を考えてみましょう。

(1)入院設備をもっている。
病状が悪く、とても在宅での療養が不可能な場合入院します。
検査や手術のため、どうしても入院せざるを得ない場合も入院します。
(2)手術できる。
(3)高度医療機器を備えている。
CT、MRI、PETなど診療所では備えられないような高額な医療機器を備えているので、診断の確定や病態の精査に応用される。
(4)高度な技術を要する特殊な検査や治療ができる
例えば大腸ポリペクトミー、総胆管結石除去、膵胆道造影、気管支ファイバー、血管造影などは入院設備があり、熟練した技術を有する複数の医師が協力する体制が必要とされる。
(5)各専門医が揃っている
複雑な病態を有する患者様に対して、病院機能を活用し専門的な診断治療を取り組むことができる。

「病院は、各専門医が重症患者の治療と高度医療を行う医療施設である」

病院か診療所か 57号 H25.7

病院と診療所が連携して患者様の便宜を図ろうとの理念に基づいて、約20年前から名古屋市では 「病診連携」が始まりました。各地区の拠点病院が中心となって、周辺で開業している診療所に「病診連携」への参加を募り、システムが構築されました。各診療所は複数の病院のシステムに参加しています。 私も病院勤務医のころ、勉強会を主催し診療所の先生方に積極的に参加を呼び掛けたものです。
自分が勤務医から開業医へと立場が変わってみると、いろいろな問題点が浮かび上がってきました。
(1)長年診療所で診てきた患者様を、ある理由のために病院へ紹介すると、紹介理由が解決した後も、病院側が紹介元の診療所へなかなか患者様を戻さない。
(2)病院へ転院した後の患者様は、病院担当医が「通院の必要がない」と告げない限り、自分から主体的に診療所へ戻ることができない。たとえ「3時間待ちの1分診療」に不満を抱いていても、病院側へ言い出せない。
(3)その時の病態ならば、診療所で十分な診療ができるにもかかわらず、患者様は設備の整った病院の方が安心と思い込んで病院通院を続けている。病状が安定していたら高度医療機器も入院設備も不要である。
(4)病院に続けて通院しておれば、急病の時いつでも入院させてもらえると思い込んでいる。通院理由の疾患の増悪時は、その病院が対応するが、他の疾患が発生した場合は、その疾患の治療に最も適切に対応できる病院は、他の病院かもしれない。診療所の医師は多数の病院と連携しているので、適切な病院を紹介できる。

セカンド・オピニオン 56号 H25.7

これまで、病気の説明を主体にこのホームページに記事を掲載してきましたが、しばらく「病気との付き合い方」や「上手な医療機関のかかり方」などを述べてみます。

初回はセカンド・オピニオンです。この言葉が世の中に広まってから20年位経ちます。セカンド・オピニオンとは、自分が現在通院あるいは入院している医療機関が行う医療内容に関して、もしあなたの心の中に不信感や不満が生じた時に他の医療機関を訪ね、他の医師の意見(第二の意見=セカンド・オピニオン)を聞くことです。命や病気は医師あるいは医療機関のモノではなく、あなた自身のモノですから、たまたま最初に受診した医療機関の医療行為に疑問が湧き、例えば「自分の病名は何か?どのような経過を辿るのか?完治するのか?しばらく付き合うことになるのか?手術が必要か?最終的には治るのか治らないのか?仕事は続けられるのか辞めざるを得ないのか?ひょっとして手遅れで自分に死が迫っているのか?」などなど疑問は火山の噴煙のように沸々と湧いてきます。もし担当医師があなたの疑問にキチンと答えない時は、セカンド・オピニオンを求めて他の医療機関を受診すべきです。それまでにいろいろな検査を受けている場合は、そのデータを前医からもらって、それを持参して次の医療機関を受診したほうがよいでしょう。内服中の薬の実物あるいは説明書きを持参すると、次の医師にとっても大いに役立ちます。
患者様にとって、セカンド・オピニオンを求めて医療機関を変更することは今や常識であり、何らためらう必要はありません。診療情報提供書を書き渋るような医師だったら、さっさと見切りをつけた方が良いでしょう。
「患者は医師を選ぶことができますが、医師は患者を選ぶことはできません」

萎縮性胃炎とヘリコバクター・ピロリ菌 55号 H25.4

これまでは胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍病名がある人のみピロリ菌検査や除菌治療が認められていましたが、今年4月から萎縮性胃炎に対するピロリ菌除菌が保険診療で認められることになりました。ピロリ菌感染は胃・十二指腸潰瘍の重要な原因であるのみならず、胃がん発生と密接に関連しています。胃がんが発生する母地として萎縮性胃炎が注目されています。ピロリ菌が発見される前の時代、萎縮性胃炎は加齢による変化と考えられていましたが、ピロリ菌と胃疾患との関連性の研究によって、ピロリ菌が萎縮性胃炎の原因であることが明らかになりました。萎縮性胃炎の患者様の多くが、胃部不快感、胃もたれなど「漠然とした胃の調子の悪さ」を訴えます。このような患者様に胃内視鏡検査を行ってみますと、萎縮性変化がみられ、さらにピロリ菌感染の有無を調べてみますと大部分の人が陽性であることが判明しました。陽性の人にピロリ菌除菌治療を行い成功すると、皆様異口同音に「胃の調子が大変よくなった」といわれます。胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対する薬物療法は大変進歩し、数週間の治療でほとんどの例で完治しますが、萎縮性胃炎に対して著効する薬剤がほとんどない現状において、除菌治療は症状改善という点で極めて有効です。除菌に成功した人を数十年間に亘って長期間経過観察した例は今のところありませんが、胃がんが発生する確率が低下することは確実です。若い人でもピロリ菌に感染していて既に萎縮性胃炎が進んでいる人は、その後の長い人生を考慮して除菌治療を是非行いたいものです。当院では苦痛の少ない経鼻内視鏡検査を行った上で、ピロリ菌感染が確認された人に除菌治療を行っています。大きな安心を得ることは、毎日の生活を充実させることにつながります。

鳥インフルエンザ 54号 H25.4

10年前に新型肺炎(SARS)が中国南部から発生して以来、久々に中国発の新しい疾患「鳥インフルエンザH7N9」が、上海市など中国東部で発生しました。中国当局の発表では患者数は2桁、死者数は10人未満とのことですが、実態が分かりません。今回の鳥インフルエンザはこれまでヒトへの感染はないといわれたタイプであるだけに、突然変異してヒトへの感染力を高めた新しい型のインフルエンザです。鳥インフルエンザウイルスは鶏の肺胞上皮に直接侵入し、鶏を呼吸困難に陥らせ鶏舎内で何千羽という単位で大量死に至らしめていました。一方従来のヒトインフルエンザは上気道粘膜から侵入し、ほとんどの症例では風邪症候群程度の症状で済んでいました。今回の鳥インフルエンザは感染者の多くが重篤な経過を辿り死亡率が高いことから、ウイルスがヒトの肺胞など下気道粘膜から侵入し、直ちに肺炎さらにARDS「呼吸促迫症候群」を発症させる激烈型といえます。生きている鶏や鶏の生肉に接触機会があったヒトが感染していますから、これらが感染経路であることは間違いないでしょう。3月ごろ大量の豚の死体が川に流された事件との関連性など、中国当局の解明が急がれます。中国から日本へ移動する渡り鳥はあまりいないようですから、もしヒトからヒトへ感染するとしたら、ヒトの動きに注意が必要になります。ところでインフルエンザの予防となると先ずワクチンを考えますが、ワクチン製造には約半年間を要します。ではワクチン接種が可能になる前、我々はどのように対応すればよいのでしょうか。よい考えがあります。感染症は宿主の抵抗力と病原体の病原性のバランスの上に成立します。従って抵抗力免疫力を落とさないようにヒトが注意することです。風邪に罹患する。深酒をする。過労が続く。など免疫力が低下しないように心掛けることが大切です。またSARSの際に中国の人々を救ったのが、ある漢方薬が効果的だったと聞いています。

大陸から日本へ飛来するPM2.5と黄砂が怖い 53号 H25.3

今年の花粉症は例年と様相が異なっています。昨年夏の暑さが厳しかったことによって、今年のスギ花粉の飛散量が多くなることは、大方の予想どおりですが、今年の特徴はPM2.5と名付けられた微小粒子が、中国大陸から偏西風によって大量に飛んできていることです。スギ花粉とPM2.5が合体すると爆発してPM1.0と呼ばれる極微小な粒子に生まれ変わり、気道を通り越して肺組織の最も奥の細胞にまで直接到達することです。春先にはさらに黄砂が加わることが予想されます。黄砂はゴビ砂漠や山西省の黄土地帯の土埃です。黄砂には細菌・ウイルスなど病原微生物が含まれています。もしスギ花粉、PM2.5および黄砂の三者が合体すると、非常に強力な病毒物質となって、我々の人体を侵す可能性が指摘されます。今のところ、目の非常に細かい医療用マスクN95を装着しないと、この病原物質の進入を防ぐことができません。ただしこのマスクは一つ約500円と高価で、また1時間も連続して装着していると、呼吸困難感が強く、多くの人に普及させることは不可能です。現時点において最善の方法は大気中のPM2.5mp量を計測し、被害が予想される値に到達したら、できるだけ早く、その地域住民に知らせて外出を控えさせることです。またこの病原物質は直ちに呼吸器症状、呼吸困難など全身症状を発症し重症化することが懸念されます。いつもの風邪より強い症状があれば、速やかに受診しましょう。この微小粒子を防ぐ手だてはないものでしょうか?雨・雪などに吸着させ早く地上へ落とさせ大気中に広げないようにする、強力に吸着するフィルターの開発など、早く実用化してもらいたいものです。

有機溶媒を扱う仕事に従事されている方々へ 52号 H25.2

先日産業医講習会で、印刷工場における洗浄液による胆管ガンの集団発生問題に関する講演を聴いてきました。大阪のある印刷工場では1990年代後半から最近までの間10数年間に、20~30歳代の若者が胆管ガンを発病し9人が死亡しました。大変重大な事態です。胆管ガンの原因と推定されているのが、1,6ジクロロプロパンです。日本で胆管ガンが発生する前にアメリカでは既に使用禁止になっていたものです。これは日本の行政の怠慢としか言いようがありません。血液製剤によるエイズ発症と同じ構図です。
そもそもガンという病気は加齢とともに増加する疾患で若者に集団発生することは、大変奇妙な事態です。人間の体にはp53ガン抑制遺伝子が存在し、もしガン細胞という異常な細胞が体内に発生すると、この遺伝子が作動し、殺し屋リンパ球を活性化させ、サイトカインと呼ばれる、いわば迎撃ミサイルをガン細胞に対して打ち込み死滅させます。p53遺伝子は年齢とともに弱くなりますから、高齢者でガンが発生しやすくなるのは、当然のことと言えます。従って若い労働者に胆管ガンが発生するのは、発ガン物質を取り扱う職場環境の問題です。作業能率を優先し、劣悪な作業環境を改善せず、危険物質取り扱いに対する教育啓蒙を怠った会社側の責任は重大です。もし有機溶媒を扱う作業に従事している方で、食欲不振・上腹部の頑固な痛み・皮膚黄染に気づいたら、すぐ消化器内科を受診してください。症状が出現してからでは遅いかもしれませんので、現在体調に問題ないと思われている方でも、定期的に検査を受けられることをお勧めします。

今年のインフルエンザの特徴 51号 H25.1

今年度のインフルエンザは例年より約2ヶ月早く、昨年12月から流行が見られます。今年のインフルエンザの特徴は、例年に比べ発病者の年齢が高いことです。2009年に世界的に新型インフルエンザが流行し、このときは内科を受診した大部分の患者が10~30歳代と若かったのに比べて、明らかに高齢者にも広く分布しています。2008年以前のインフルエンザは、乳幼児と高齢者に重症化することが多く、特に老人ホームなど高齢者施設で流行すると1施設で数人の死亡者が出たことがニュースになっていましたが、今年は2008年度以前のパターンを示唆しているかもしれません。従って高齢者施設で厳重な感染対策が重要です。以下の項目を十分理解し対応しましょう。

 (1)風邪をひかないこと。風邪をひいて抵抗力が低下しているとインフルエンザウイルスに感染しやすくなります。
 (2)インフルエンザウイルスは飛沫感染しますから、患者の2~3m以内にはなるべく近づかない。
 (3)咳やくしゃみが出る人は、必ずマスクを装着し人に感染させないのが、社会人としてのエチケットです。
 (4)インフルエンザの典型的症状は、悪寒・関節筋肉痛・倦怠感・高熱など全身症状です。
 (5)上記のような症状を発症したら早めに受診しましょう。
 (6)高齢者では倦怠感や食欲不振など症状が典型的でないため見逃される恐れがあります。

痛みと漢方治療~西洋医学的に診断がついても、治療できない疼痛性疾患 50号 H24.9

痛みは本人にしか理解できない症状です。しかし実に多くの患者様が痛みを訴えて来院します。その中でも長期に亘って患者様を悩ませている痛みは、頭の先から順に片頭痛・三叉神経痛・舌痛・肩関節~上肢痛・帯状疱疹後神経痛・痙攣を伴う下肢筋肉痛・坐骨神経痛・リウマチ性筋痛などです。一般には消炎鎮痛剤が使われることが多いのですが、効果は一時的で対症療法に過ぎず、根本治療に至らないのが現状です。慢性疼痛の多くは、ストレス・冷え・血行障害などが誘因になりますから、これらを治療することが重要です。当院ではこのような難治性・再発性の慢性疼痛に対して、漢方治療を行い良好な治療成績が得られています。その一部を紹介します。ストレスや怒りが原因の場合、柴胡加竜牡蛎湯、抑肝散などが効果的です。冷えが原因の場合は、温性薬である麻黄附子細辛湯や桂枝加朮附湯が良く効きます。特に女性の肩痛や上肢痛が良い適応です。冷えが原因であるにもかかわらず、冷湿布が処方されている場合がしばしば見受けられますが、それは逆効果です。淤血症(末梢血流障害)があれば、当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・疎経活血湯などが適応となります。熱中症に伴うコムラ返りは、疲労のために筋肉に乳酸が貯まったり、発汗のため塩分を失ったときに発症します。先ずスポーツドリンクを飲んで予防し、けいれん発作が起きたら芍薬甘草湯を服用するとよいでしょう。意外に速効性があります。

胃アニサキス症 49号 H24.7

日本では海の魚を刺身で食べる習慣がありますが、腸炎ビブリオによる食中毒や魚の寄生虫に注意が必要です。最近当院で経験した胃アニサキス症例を紹介すると共に、対策について述べたいと思います。40歳代の男性が前日夕食時に酢サバを食べ、その2~3時間後に激烈な心窩部痛を発症しました。職場から帰宅の途中だったため、最寄りの医療機関に緊急で診察を求めました。緊急血液検査では異常ありませんでした。その夜は激しい痛みが続き翌朝当院を受診しました。サバを生食とその直後の激しい上腹部痛から、胃アニサキス症を疑い、ただちに経鼻上部消化管内視鏡検査を行いました。胃体部後壁に白い糸状の虫体を発見。虫体をよく観察すると幽門側の虫体の先端付近の胃粘膜が軽度に発赤していることを確認。その部位が虫体の頭部であり、直ちにこれを生検鉗子で胃粘膜と一緒に掴み回収。回収したのは約1cmのアニサキスの虫体でした。一方患者様はほぼ同時に胃部痛は軽快し、処置終了後は何事もなかったかのような表情で帰りました。元来アニサキスはクジラやイルカの寄生虫で、幼虫はしばしばサバ、サケ、イカ、タラなどの腸管に住みつき、宿主が死亡すると腸管内から筋肉に這い出し、それをヒトが生食することによって胃アニサキス症を発症します。これらを刺身や酢で〆て摂取することは危険です。ただし、極めて新鮮な魚をプロの調理師が気をつけて調理すれば、予防できると思います。幼虫が胃に留まらず腸へ到達すると、腸粘膜に炎症性腫龍を形成し、腸閉塞のような症状を発症します。但し腸管へ到達した幼虫は約1週間で死滅すると言われています。因みに私自身が経験した胃アニサキス症の原因魚はサバ、イカ、サーモンでした。これらの刺身を食べて数時間で激しい上腹部痛を突然発症したら、できるだけ早く内視鏡検査が行える医療機関を受診してください。

熱中症 48号 H24.7

今年の夏は特に暑さが厳しそうです。暑い夏のもっとも大きな健康問題は熱中症です。高齢者は皮膚が萎縮し汗腺の数が減少するため、体温が上昇した時に発汗量が少なく、体温を下げることができず、熱中症にかかりやすくなります。また高齢者はそもそも細胞内の水分量が少ないため、少し水分が不足するだけで高度の細胞内脱水を起こします。さらに高齢者は暑さに対する感受性が低下し、若い人なら暑くて仕方なくエアコンを使うような温度に室温が上昇しても、暑さを強く感じずにエアコン使わずに暑い室内で平気で過ごしてしまいます。以上の原因が複合し、本人が自覚しない内に熱中症が進行し、重篤な状態に陥ります。
気温が30度を越したら、本人が自覚するしないを問わず、熱中症が迫っていると自覚して対策を立てましょう。

(1)炎天下の外出は極力避ける
(2)やむを得ず外出する時は帽子をかぶったり、傘をさしたりして直射日光を避ける。
(3)スポーツドリンクをこまめに少量ずつ飲用する。
(4)真水はミネラルや糖分を含まないので脱水予防には不適です。
(5)吐き気や頭痛、震え、目の前が暗くなる。などの症状があれば、すぐに風通しの良い場所で横になって
(5)休み、鼠蹊部・腋の下・頚部を冷やしたタオルで冷却する。
(6)(5)の処置でも改善しなければ最寄の医療機関を受診する。

症状シリーズ(9)浮腫 47号 H24.1

しばしばみられる症状に浮腫(むくみ)があります。本来、体の水分は血管やリンパ管の中、あるいは細胞の中に存在しますが、いろいろな原因に伴って細胞と細胞の間すなわち間質に水分が貯留することを浮腫といいます。浮腫が生じやすいところは皮下では上眼瞼、下腿、足背などです。内臓では胸腔、肺胞周囲、腹腔、腸管壁などです。浮腫の原因として、(1)心不全などによる毛細血管の静水圧上昇、(2)ネフローゼ・肝硬変・飢餓などによる血液浸透圧の低下、(3)間質の粘液の増加に伴う間質浸透圧上昇(粘液水腫)(3)炎症に伴う毛細血管透過性の亢進(蕁麻疹や蜂窩織炎)(4)リンパ管閉塞によるリンパ液の間質への漏出(5)特発性浮腫などが挙げられます。

治療法は、原疾患の治療が優先されます。原疾患の治療のみで改善する浮腫は、低栄養、粘液水腫、および炎症によるものです。しかし多くの浮腫は原疾患の治療に利尿剤などを加えることが必要になります。また原疾患の治療を行わなくても利尿剤のみで軽快する場合も見られます。特に心不全は利尿剤のみで浮腫のコントロールが可能です。女性に多くみられる浮腫が特発性浮腫です。朝上眼瞼など顔面の浮腫がみられ、夕方からは下腿浮腫がみられます。アルダクトンAという薬剤が特効薬です。

難治性浮腫の代表がリンパ浮腫です。乳がん手術後の際、腋窩(脇の下)のリンパ腺を取り去ります(リンパ腺廓清)。子宮がんや前立腺がんの手術の際にも骨盤腔内のリンパ腺廓清が行われます。すると上肢あるいは下肢の皮下を流れるリンパの流れが途絶し、その上流のリンパ管内圧が上昇しリンパ液が皮下組織に漏れます。血管外科を受診するとリンパマッサージや弾力包帯などが指示されます。当院では漢方薬と利尿剤を組み合わせることによって良好な治療結果が得られた症例を経験しました(投稿中)。利尿剤など従来の治療法で治りにくい浮腫でお困りの方、当院にご相談ください。

症状シリーズ(8)吐血 46号 H23.6

血液を含む胃内容物あるいは血液を食道を経て嘔吐することを吐血といいます。一方肺あるいは気道からの出た血液を咳とともに喀出することを喀血といい、はっきり区別することが必要です。

食道・胃・十二指腸から出血した血液は胃内に停溜している間に胃酸と反応し黒く変色します。時間出血量が少ない場合は、吐き気を伴わないため吐血せず、タール便(コールタールのように黒い便)を排泄(下血)します。一方時間出血量が多い場合は、腸へ送られる血液量に比ぺて、胃内に貯留する血液量の方が多く、一定量たとえば500cc以上胃内に溜まると吐き気を催し嘔吐します。この場合の吐物は黒く変色した血液と食物や胃液が混じっていますので、コーヒー残瑳物と呼びます。食道から大量に出血した場合は、胃酸と反応する前に嘔吐するため鮮やかな血液を嘔吐することがあり、喀血と見間違えることがあります。

吐血を来す頻度の多い疾患として食道静脈瘤・胃潰瘍・胃がん・急性胃粘膜病変・十二指腸潰瘍などが挙げられます。その他に食道がん・逆流性食道炎・胃毛細血管拡張症・まれには胃生検後などにもみられます。
高齢化社会が進み、鎮痛剤や抗凝固剤を服用している高齢者が増加している昨今、出血性胃潰瘍が増加しています。高齢者では胃部痛を自覚することなく、突然吐血する場合がみられます。

食事摂取量の減少などの症状がみられたら、早めに胃カメラ検査を受けましょう。当院では3年前から経鼻細径内視鏡を用いほとんど苦痛なく検査を受けていただけます。

東西医学融合医療 45号 H23.5

明治維新以来、日本の医療は西洋医学を中心に病因の迫及とその治療法の開発に専念してきましたが、昭和50年ごろ漢方薬が保険診療として認可されて以降、西洋医学のみでは治療困難な症例に対して、漢方薬が用いられるようになりました。
当院でもそのような症例に対しては東洋医学と西洋医学のそれぞれの長所を活かす医療を模索し実行してきました。今回は両者を同時に用いることによって良好な治療効果が得られている疾患の一部を紹介します。

かぜ症候群:初期との治癒遷延期で漢方薬を選択し、熱発や咳嗽などの症状には西洋薬を併用
インフルエンザ:麻黄湯を主体とし、抗ウイルス薬と下熱剤を併用
鼻炎・副鼻腔炎:辛夷清肺湯あるいは荊芥連翹湯と抗生剤や去痰剤との併用
急性扁桃炎:熱証では小柴胡湯加桔梗石膏と抗生剤・下熱剤との併用
感染性腸炎:五苓散あるいは半夏瀉心湯と化学療法剤との併用但し止痢剤は禁忌
慢性眸炎:胸脇苦満があれば柴胡桂枝湯とたんぱく分解阻書薬との併用
慢性頭痛:呉茉莫湯あるいは葛根湯と鎮痛剤の屯用
認知症と粗暴な行動:アリセプトと抑肝散との併用
慢性疲労症候群:補注益気湯とビタミンCとの併用
めまい:五苓散と抗めまい薬の屯用

がん検診 44号 H23.3

3年前、なごやか検診に代わって、特定検診と後期高齢者健康診査が始まりました。これらは糖尿病・肝機能異常・脂質代謝異常などを早期発見し、動脈硬化性疾患の進展を予防し、最終的には心血管イベントによる死亡率を減らすためのものです。一方日本人の死亡原因としてがん死の割合が今後ますます増加するものと考えられています。従ってがん治療費あるいはがんのため死亡するまでの医療費が莫大であることは明白な事実です。
がんを早期発見すれば治るケースも多く、その場合医療費はそれほど高額になりません。自分の命を守るためにも是非年1回はトータルにがん検診を受けられることをお勧めします。
当クリニックでは下記の検査によって各がんの早期発見につとめています。

・胸部X線撮影
 肺・胸膜

・経鼻上部消化管内視鏡
 咽喉頭・食道・胃・十二指腸

・超音波検査
 甲状腺・肝臓・胆嚢胆管・膵臓・脾臓・腎臓・膀胱・前立腺

・便ヒトヘモグロビン
 主に大腸

・腫瘍マーカー3種類検査
 男性ではCEA(肺・膵・大腸)   CA19-9(胆道・膵・大腸)PSA(前立腺)
 女性ではCEA CA19-9 CA125(卵巣・子宮)

以上の検査を所要時間1時間以内で行い、胸部X線・内視鏡・超音波は即日で結果を説明します。更なる検査が必要であれば、胸部CTや腹部CTなどを手早く手配します。大腸の精査が必要と判断すれば、大腸内視鏡検査を日を改めて行います。

今年のインフルエンザについて 43号 H23.2

今年もインフルエンザの季節がやってきました。今年のインフルエンザは一昨年夏から秋にかけて流行した新型インフルエンザあるいはA香港型がほとんどです。症状は発熱、悪寒、倦怠感、筋肉関節痛が主で、鼻汁、咽頭痛、咳嗽など普通感冒でみられる症状はやや軽いようです。ただし今年に限って言えば、典型的な全身症状があまり顕著ではない例も多々みられますので、受診の上検査を受ける必要があります。当院は小児科を標榜していませんので、患者年齢は20歳代と30歳代が主体です。40歳代以上に少ないのは、科学的に証明されたわけではありませんので私見ですが、過去の大流行を経験したか否かが関係しているように思われます。

診断は簡易キットにてA型かB型かを鑑別します。発症して間がないと検査結果が陰性に出ることがあります。当院では陽性になるかもしれないという前提で、インフルエンザの初期にも効果がある麻黄湯を処方しています。翌日に再度受診し再検してインフルエンザと診断できた例もあります。当院では安全性の高いリレンザ吸入薬を処方します。また少しでも早く、倦怠感・悪寒が改善するように上記の麻黄湯を用います。

予防は手洗いです。誰が触れたか分らない物にはやたらに触らないことです。またその手で自分の鼻、口、目などを触らないことです。マスクは咳が出る人やインフルエンザに罹患した人が装着すべきです。やたらにうがいをすると唾液が洗い流され、粘膜防御作用のある免疫グロブリンIgAが失われます。新茶に多く含まれるカテキンはインフルエンザウイルスが気道粘膜へ侵入するのを防いだり、ウイルスを死滅させる作用があると言われていますので、温かい新茶でうがいあるいは喉を潤すことをお勧めします。