中国湖北省武漢市に始まった新型コロナウイルス感染による肺炎が異様な拡がりをみせています。人類にとって初めての病原体に遭遇した場合、現代西洋医学では病原体の同定、遺伝子構造の解析、ワクチン製造までに、少なくとも半年から1年の期間を要します。もしその病原体がヒトからヒトへの強力な感染性を獲得すれば、治療法が確立される前にウイルスは全世界に拡散し、多くの犠牲者が出ることが懸念されます。第一次世界大戦中に全世界で約3000万人、日本でも約30万人が死亡したスペインかぜの大流行が想起されます。
新型ウイルス感染に対して、現代西洋医学的に有効な手立てがないならば、今日からでも始められる予防法を実行しなければなりません。一般に感染症は病原体の毒力と宿主の免疫力とのバランスで成り立ちます。今回のコロナウイルスは野生動物(ネズミ)の常在ウイルスであり、その野生動物では発病せず、ヒトに感染して初めて病原性を現すと考えられます。すなわち当該野生動物にはウイルスに対して免疫力があり、感染しても発病しないシステムが出来上がっているのです。
新型コロナウイルス肺炎の震源地である中国武漢市の人口は約1100万人で、発病患者数が仮に10000人と推定して発病率は0.1%弱であり、大多数の市民はウイルスに暴露されても体内へのウイルスの侵入を阻止し、あるいは感染したとしても発病しない抵抗力を持ち合わせていることになります。感染しない・発病しない・重症化しない人たちに注目してみる必要があります。
コロナウイルス肺炎が重症化した患者の多くは、高齢者や持病のあるヒトとのことです。免疫力・抵抗力が充実している健康人は感染しても発病しないことは、インフルエンザと共通することです。「風邪は万病の元」と言いますが、当に風邪をひいて抵抗力が低下した状態に陥らないように注意することが、新型コロナウイルス感染対策として最も重要であると考えます。日常生活において、「外出時には体が冷えないように1枚上着を重ねる」「襟巻や手袋なども装着する」「汗をかいたら早めに下着を変える」「睡眠不足にならない」「深酒をしない」「食べ物に注意し下痢などによる体力低下脱水に注意する」「唾液中の免疫グロブリンを失わないようにウガイをし過ぎない」「ウイルスが付着している可能性がある手で、自分の鼻孔や口を触れない」などです。
ガーゼマスクや紙マスクは一旦空気中に飛散した病原体の侵入を阻止できないので、健康人がマスクを装着することは無用です。但し、しぶきに付着したウイルスの飛散は廉価なマスクでも阻止できるので、咳やクシャミをするヒトは他人にウイルスを感染させないため、マスクを装着しなければなりません。N95マスクの着用を試みた経験があります。1個500円と高価であり、また装着して僅か1時間で呼吸困難となりましたので、実際的ではありません。
ところで患者と接する医療従事者は、常に感染症に罹患するリスクを負っています。自分自身の健康状態を維持し、常に緊張感を持って仕事に従事しているならば、アドレナリンが出て体温が高い状態が維持され免疫力が高まっているので、咳やくクシャミをする患者に紙マスクを装着させれば、マスクなしで診療しても、患者から感染することはないと確信しています。
コロナウイルスと言えば2003年のSARSが思い出されます。当時中国広東省および福建省を中心に多数の感染者が発生し、約700人が重症肺炎・呼吸不全のために死亡しました。ところが広東省のある病院では、SARS患者全員に漢方薬「荊芥連翹湯」と「補中益気湯」を服用させたところ、一人も死者が発生しなかったという情報を中国人の医師から得ました。荊芥連翹湯は副鼻腔・鼻腔のみならず気管支の分泌物を排出する作用を有し、補中益気湯は消化機能を改善することによって栄養素を全身に行き渡らせ、傷害された組織を修復させる効能があります。この両者を併用したことによって、SARSウイルスの肺への侵入や肺病変の治癒に効果的だったと考えています。
体調管理と漢方薬治療が、新しいウイルス感染対策に有効と思いますがいかがでしょうか?
詳しくはこちら
≪「がん」は付き合い方次第~一内科医からの提言~≫
「がん」は付き合い方次第~一内科医からの提言~4月15日に小学館スクウェアから出版されます。
東京、名古屋、静岡、岡崎、大垣、安城の有名書店で購入できます。
病死など自然死する人の中で、かなり多くの人が「納得できない死に方」をしていると思います。がんで亡くなった人の中には、「もう少し早く手を打っておけばよかったのに」と無念に思いながら旅立った方が結構おられると思います。このような「受容できない死」ではなく、自分が納得しながら「受容できる死」を迎えるには、自分の死が遠い存在としか思えない成壮年期から、がん検診を受け適切に対応することが重要であることを一般の人に知っていただくことが、臨床医の責務であると考えます。前半はがんに罹らないための日頃の注意とがん検診の意義を説明し、後半は多くの死を見届けてきた医師の立場から、進行がんが発見された時、死を避けることができないと判断される状態に至った時、さらに死が目前に迫った時、それぞれの段階で残された時間をどのように過ごしたら、悔いを残さず心静かに人生を卒業できるかを、実例を示しながら解説しました。